なぜkuccaはエリクソンの発達心理段階を大切にしているのか?
今回は、エリクソンの発達心理段階の中でも《学童期7歳~12歳》に焦点を当てて、私なりにその意味を紐解いていこうと思います。
その前に、改めて「なぜkuccaはエリクソンの発達心理段階を大事にしているのか」についてお伝えさせてください。
私は日頃から【本質】という言葉をよく使います。
それは、子育てにおいて「本質」がとても大切だと考えているからです。
では、皆さんにお聞きします。
「子育ての本質って、何だと思いますか?」
私はこう考えています。
「この子が、自分らしく育つための土台をつくること」
エリクソンの発達心理段階は、まさにその土台づくりの“道しるべ”のような存在です。
たとえば、赤ちゃんの時期には「自分は安心してここに存在していていいんだ」と感じられることが最優先。
それが育つと、次に「やってみよう」「やっても大丈夫なんだ」という意欲が自然と芽生えていきます。
エリクソンの理論は、子どもが心の根っこをどう育てていくか、
その“順番”をとても丁寧に教えてくれるんです。
子どもの心の発達には順番がある。
その順番を、理論的に示してくれるからこそ、kuccaではエリクソンの考え方を「子育ての軸」としてとても大切にしています。
子どもが「自分らしく生きる力」を育てるために――。
kuccaとエリクソンの発達理論の関係
kuccaの排泄育児では、エリクソンの乳児期・幼児期の理論がひとつの道しるべとなっています。
また、性教育の領域では、児童期の理論をベースにしています。
そして、そこからつながる「10歳のトビラ」の講座では、まさにこの《学童期》の理論が深く関わってくるのです。
乳児期、幼児期初期、乳児期後期――それぞれの段階において、復習や新たな学びを重ねておくことはとても大切。
特に今回取り上げる「学童期」を深く理解するためには、その一つ前の「乳児期後期」の理解が不可欠です。
年齢でいえば、乳児期後期は4〜6(7)歳。
学童期と併走するように重なる部分もあるため、並行してアプローチしていくこともおすすめします。
kuccaがエリクソンの理論を紹介するのは、いわば“エビデンス”として、
地図を片手に子育てを進めていくような感覚で、活用していただけたら嬉しいです。
学童期の心理的課題とは?
※ここで、性教育学講座をご受講いただいている方は、ぜひテキストや学びの記憶を思い出しながら読んでみてください。
さて、本題です。
エリクソンの理論によれば、7歳~12歳の「学童期」は、勤勉性を課題として獲得していく時期です。
このとき、子どもは劣等感という危機を乗り越えていく必要があります。
ここで、私なりのエリクソン理論の読み取り方を一度整理してみます。
〈エリクソンの発達心理段階の構造〉
【その時期】に【心理的課題】を得るために、【危機】という壁に向き合う。
さまざまな環境下でその【危機】に挑み、結果として【心理的課題】が育まれる。
このプロセスを各段階で繰り返していくことで、その年齢に必要な心の力を手にしていく。
それがエリクソンの理論の本質だと、私は理解しています。
つまり、「学童期」は、「勤勉性」という力を得るために、「劣等感」という壁に出会い、それを乗り越えていく時期。
その乗り越えの先に、学童期で育むべき力が備わっていく、ということになります。
勤勉性って、なんだろう?
エリクソンは、勤勉性を
「社会的に期待される活動を、自発的かつ習慣的に行う力」
と定義しています。
でも私の理解は、もっとシンプル。
それは、「決められたルールを、地味にコツコツと継続する力」です。
この視点で考えると、「学校に通うこと」は、この時期における“勤勉性”の実践だと言えるのではないかと思っています。
教育思想家・コメニウスも、同一学年・同一教科書による教育を重視し、共通の知識を身につけることの重要性を説いています。
こうした考え方にもつながるように感じています。
たとえ不快であっても、学校という“社会”の中で、決められたことを継続する。そうすることで、「やればできる」「続ければ力になる」といった成功体験が育っていきます。私は成功体験も勤勉性の一部だと解釈しています。
「劣等感」と向き合うために必要なもの
この時期におけるもう一つのキーワード、それが「劣等感」です。
そして、エリクソンはこの時期に特に大切な存在として、「友達(仲間)」を挙げています。
友達や仲間といることで、劣等感は自然と生まれます。
逆にいえば、仲間がいてはじめて、劣等感も優越感も感じることができるのです。
家庭という安全基地だけでは得られない経験。
それが、仲間と過ごす集団の中での比較・競争・協力なのだと思います。
ここでいう劣等感とは、「あの子よりできない…」といったネガティブな感情だけを指しているのではありません。
その劣等感の中にこそ、成長のヒントや学びがたくさん隠れている。
そう、劣等感と優越感は、常に“セット”なのです。
学童期に「学校」が大切な理由
エリクソン理論をふまえれば、
「友達との関わりの中で、劣等感や優越感を経験しながら、ルールある生活を継続していく」
これが学童期における大切なプロセスになります。
だからこそ私は、この時期に学校へ通うことがとても重要だと感じています。
近年、「おうち教育」や「ホームスクーリング」といったキーワードも聞かれるようになり、学校に通わない選択肢も増えてきました。
もちろん、それを頭ごなしに否定するつもりはありません。
不登校を悪とする立場でもありません。
ですが、学校という“社会”に挑戦する機会を、安易に手放してしまうことは、ある意味で子どもの成長の可能性を奪うことにもなりかねないと感じています。
三間(サンマ)の減少が示す、現代の子育ての課題
私が「10歳のトビラコース」を開講した理由には、小1プロブレムや不登校の問題が背景にあります。
その原因としてよく挙げられるのは、
- 他者や地域との関わりの減少
- 子育てに自信を持てない保護者の増加
- 道徳を学ぶ機会の減少
さらに、もうひとつ大切なキーワードがあります。
それが 「サンマの減少」 です(魚の秋刀魚ではありませんよ!)。
サンマ=三間(さんま)
この3つが、現代の子育てでどんどん失われていると言われています。
私自身もとても感じています。
この「三間」は、「10歳のトビラコース」でもさまざまなテーマを通じて掘り下げていく予定です。
「我が子には、この三間がある!」と胸を張れる子育てを、皆さんと一緒に目指していけたらうれしいです。
学童期に大切にしたい3つのこと
話が少しそれてしまいましたが、改めて。
エリクソンの発達心理段階《学童期7歳~12歳》を紐解くことで見えてくるのは、以下の3つの大切さです。
- 学校でのルーチンを継続すること
- 友達との関わりの中で育まれる経験
- そこから生まれる劣等感と優越感という心の揺らぎ
これらすべてが、子どもが“自分らしく生きる力”を育むための大切な一歩になるのでは、と私は思っています。
まずはここを皆さんと一緒に実践出来たらと思います。


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